学長・教育学部長より

ポストコロナ時代の新しい教育へ向けて
和歌山大学長  伊東 千尋

 紀学同窓会並びに会員の皆様には、日頃より本学の教育研究活動に多大なご理解とご支援を賜り、衷心より感謝申し上げます。
 さて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は未だ収束せず、不本意ながら昨年から継続して実施しております感染拡大防止のための対応が本学の大きな課題となっています。既に6月20日に解除となりましたが、4月23日に大阪府に対する三度目の緊急事態宣言が発出された際には、新学期開始時から続けておりました対面授業を遠隔授業に切り替える措置をとりました。本学の学生の約6割が大阪府を通過して登学している状況を鑑みての対応でしたが、久しぶりに学生が溢れ、語らい、学ぶ理想のキャンパスが戻ってきたと喜んでおりましたところ、1ヶ月と経たずに、このような状況に陥ってしまったことは残念でなりませんでした。6月20日の宣言解除を受け、一部を除き対面授業を再開しこれにより、再びキャンパスに学生が戻ってまいりましたが大阪府はその後もまん延防止等重点措置が取られており、本学としてはこの事態を重く見て、感染防止に努めているところです。
 この新型コロナウイルス感染症への唯一の積極的対策が、ワクチン接種です。本学も、本学を含む和歌山県内の高等教育機関の学生、構成員に対して職域接種を実施すべく準備を進めておりますが、政府発表のようにワクチン供給の問題があり、この稿を認めている時点では、接種日時を確定できておりません。本学としましては、政府のワクチン政策を注視しながら、希望者に対して一日も早い接種ができるよう対応してまいります。
 さて、この新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、これまでの日常でコミュニケーションの基本であった、人と人とが直にあって話すという行為が抑制されるようになりました。教育においても、このような観点から、遠隔授業等のICTを活用した教育が重視されています。和歌山県独自に進められた政策と、時を同じくして推進された国の施策であるギガスクール構想により、児童・生徒一人に一台の端末が準備され、ICT教育の環境
が整い、コンテンツ開発とICTスキルの増進が急務となってきています。和歌山大学では、情報処理教育、AIを含むデータサイエンス教育について積極的に進めておりつい最近、本学で進めているデータサイエンス教育のエントリーレベル講義である「データサイエンスへの誘い」が、文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル) に認定されました。今回、短期大学を含む大学と高等専門学校の11校のプログラムが認定を受けましたが、国立大学は本学と岡山大学の2校のみであり、本学のプログラムの先進性と充実度の高さを表す良い指標となっています。さらに、教育学部附属学校を中心として教育におけるICT活用を進め、モデルとなる施策を展開しております。このような本学の取り組みにおける蓄積を生かし、県下の小中高等学校におけるICT活用の促進について、今般のデジタル化推進の政府方針に沿って立案いたしました和歌山大学DX推進計画の中で進めてまいります。この一環として、海南市教育委員会様と「海南市の小中学校におけるICT活用推進のための教育環境整備に関する共同研究」の契約を結び、小中学校におけるICT活用のモデルケースとなり得る効果的なICT活用を研究していくこととしています。
 今後も和歌山県における唯一の国立大学としてその役割を果たすことができるように努めて参りたいと考えます。皆様には変わりないご理解とご支援を賜りたくお願い申し上げます。
 最後になりましたが、紀学同窓会の更なるご発展と、会員皆様のますますのご健勝・ご活躍をお祈り申し上げます。


Society5.0時代を担う教育学部を目指して
教育学部長  本山 貢

 紀学同窓会および会員の皆様方には、平素より教育研究活動に多大なご尽力をいただき心から感謝を申し上げます。
 さて、2019年度末から全世界に猛威を振るっている新型コロナウイルスの蔓延は、ここまで長期化するとは予想もしておらず、未だに終息する兆しがないこと、また和歌山県内の学校現場では大きな痛手となってしまいました。また和歌山大学の授業も約1年半にわたって遠隔授業が継続され、やっと2021年7月から対面授業を再開することができました。教育学部は実技や実験・実習など対面でしか得ることが難しい授業が複数あることから、教育の質保証が危惧され、教育の質を低下してしまう状況に追い込まれてしまったのも事実です。さらに教員養成を担う学部として、教育実習は欠かすことができません。2020年度は附属小・中・特別支援学校や和歌山市教育委員会、県教育委員会と複数回協議し、教育実習への理解と協力を促すとともに、新型コロナウイルス感染防止対策を徹底して行い、実習を完了することができました。他大学では教育実習を中止せざるを得ない状況に追い込まれたという非常事態もあったようです。和歌山大学は文科省が示す教育実習特例を活用しなくても何とか実習を乗り越えることができたことは不幸中の幸いであったと思います。
 私は、学部長に就任して3年目となります。日々学部の将来像を見据えて悪戦苦闘し、その責務を痛感しながら学部の舵取りをしています。今、教育学部にとって一番の課題は、学部定員とカリキュラム改革です。学部改革により令和元年度には、学校教育教員養成課程のみの1学年165名が在籍する学部になってしまいました。和歌山県の人口規模からして教育学部定員はやや多いのが実情です。今後、和歌山県は子どもの数の減少に伴う教員需要の低迷時期を迎えます。和歌山県の教員需要は、ここ2~3年をピークに今後5から6年後には教員募集が今よりも半減していくことが推測されています。このような状況を踏まえ、文科省は学部の定員を見直し、地域の規模に合わせた教員養成機能を果たすようにとの指示です。ただし、和歌山県の地域課題、たとえば極小規模化する学校現場で活躍する教員養成、採用、研修の一体的な改革を行い、さらにカリキュラム改革や学部の特徴等を明確化できるのであれば大幅な定員削減はしないという指示です。和歌山県の教育を担う責務と自覚をもって現在模索しているところです。
 全国の国立大学系教員養成大学・学部を巡る動向について、中央教育審議会では2020年代の実現すべき「令和の日本型学校教育」で目指す学びの姿として、「個別最適な学び」と「協同的な学び」を一体的に充実し、「主体的・対話的で深い学び」を実現させることを希求しています。Society5.0時代の到来に対応し、教師の情報活用能力、データリテラシーの向上が一層重要視され、ICTを活用した指導力、プログラミング教育、STEAM教育、SDGsなど様々な対応が求められる時代が加速化されてしまいました。さら全国の教員養成学部には、大学間で教育課程の連携を実現するために大学等連携推進法人制度を検討し、連携教職課程を創設することを求めています。和歌山大学も近い将来、他大学と双方のメリットを共有した教育課程上の連携をスタートさせる日が来るかもしれません。
 このように学校教育において新たな戦略的な指針が示されるなか、和歌山大学教育学部は、和歌山県や大阪府等の教育事情を鑑み、多くの学生さんを教師として、教育力と実践力を身に付け現場に送り出します。ここ数年は一般企業や公務員に就職する比率が高くなり、教師を目指す志望者が低迷しているのも事実です。煩雑化する教育現場の実情からして、教師を目指す学生さんにとって明るい希望ばかりが見えてこないという状況もあり、教師の道に躊躇し始めている傾向があります。しかしながら教育学部は教員養成を担う使命を十分に果たし、多くの教育者を輩出できるよう努力していきます。現在、大学教員は約70名ですが、学部構成員がチーム一体となって努力しています。紀学同窓会員の皆様のご支援とご指導、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願いいたします。

 

※以上は、2021年10月更新。紀学同窓会会報より転載。