学長・教育学部長より

学びの精神を未来へ 〜創立150周年記念に寄せて〜
和歌山大学長  本山 貢(もとやま みつぎ)

和歌山大学教育学部が創立150周年を迎えるにあたり、心よりお祝い申し上げます。この記念すべき節目に際し、教育の現場を中心にしてご尽力されてました同窓生の皆様、そして本学教育学部の発展を支えてこられた関係者の皆様に、深く敬意を表し、感謝の意をお伝えいたします。
本学の歩みは、明治8年(1875年)に設立された和歌山県師範学校に始まり、その後の時代の変遷とともに進化を遂げ、現在の和歌山大学教育学部へと発展しました。150年という長い歴史のなかで、本学は常に時代の要請に応えながら、教育者の育成に力を注いできました。本学を巣立った卒業生の皆様は、日本全国の教育現場で活躍し、未来を担う子どもたちの成長を支えてこられました。その貢献の大きさを思うとき、本学が担う使命の重要性を改めて認識させられます。
現代社会は、急速な技術革新、グローバル化、そして多様な価値観の共存が求められる時代へと移り変わっています。教育のあり方も変革を迫られており、従来の枠組みにとらわれない柔軟な発想と、新たな教育手法の導入が求められています。和歌山大学教育学部は、こうした社会の変化に対応すべく、実践的な教育の充実を図り、地域や国際社会と連携しながら、次世代の教育者の育成に取り組んでいます。
紀学同窓会の皆様の存在は、本学の教育の発展において極めて重要な役割を果たしてこられました。先輩方の豊富な経験や知見が、新たな世代へと受け継がれることで、教育の質の向上が図られ、より良い未来が築かれます。150年にわたり築かれた「学びの精神」を継承し、時代の変化に応じた新たな教育のあり方を共に考え、実践していくことが、今後ますます求められていくことでしょう。
これまでの150年を振り返ると、本学部がどれほど多くの教育者を輩出し、社会に貢献してきたかがわかります。卒業生の皆様が、それぞれの地域で培った知識や経験を活かしながら、教育を通じて社会をより良いものにしようと努力されている姿は、本学の誇りであり、今後の指針でもあります。教育とは、単に知識を伝えるだけでなく、人を育て、社会を形成する基盤となるものです。そのような大きな責任を担う教育者の育成に、本学が長年取り組んできたことに誇りを感じるとともに、その責務をさらに強く自覚しなければならないと考えています。
また、教育の未来を考える上で、次世代を担う若者たちにどのような環境を提供し、どのような価値観を伝えていくかが極めて重要です。学問の深化はもちろんのこと、社会における実践的な経験の蓄積、異文化との交流、さらにはデジタル技術を活用した教育方法の革新など、多様な視点から教育の在り方を再考することが求められます。本学部は今後も、新たな教育の形を模索しながら、学生たちがより広い視野を持ち、実践力を備えた教育者として成長できるよう尽力してくれることでしょう。
さらに、これからの時代に求められるのは、多様性を尊重しながら協働する力です。社会の急激な変化のなかで、教育者には柔軟な対応力とともに、多様な価値観を理解し、共生する姿勢が求められます。本学では、地域の教育機関との連携を強化するとともに、国際的な教育プログラムを充実させることで、多様な社会に適応できる教育者の育成に力を入れています。また、最新の教育研究を積極的に取り入れながら、実践的な学びを深める機会を提供し、より良い教育の未来を築いていくことを期待しています。
紀学同窓会の皆様には、今後も本学部の教育活動にご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。これからも、紀学同窓会と本学が力を合わせ、未来の教育を支えるために協力していけることを願っています。
最後に、本会報が本学部の歴史と成果を振り返るとともに、未来への指針となることを願いつつ、紀学同窓会の皆様の益々のご発展とご健勝を心よりお祈り申し上げます。


開学150年周年の記念すべき年に
教育学部長 山﨑 由可里(やまざき ゆかり)

今年は、和歌山大学教育学部の前身である和歌山県師範学校の開設(1875年)から数えて150年の節目の年にあたります。また、2026年は、師範学校創設以来の教育実習校である附属小学校が開校150年を迎えます。150年の長きに亘り、多くの卒業生は、幾多の困難を乗り越え、次代を担う子ども達のよき教育者として、地元の教育を支えてきました。時代は移り変わっても、本学部の使命である教員養成の役割は変わることはありません。

<小学校教諭一種免許状取得を基本とする教員養成カリキュラム>
教育学部では、学生達が4年間の学びを通して、時代の変化を見据え、子どもの学習権保障の担い手として成長することを意図し、現在、以下のような特色をもつカリキュラムを設定しています。
まず、2023(R5)年度入学者(今年度3回生)から、小学校教諭一種免許取得が必修となりました。そのため、小学校教諭一種免許取得のために必要要件として定められた授業科目を4年間で確実に履修できるよう、従来のカリキュラムを整理しました。そして、小学校に加えて、幼稚園、中学校および高等学校、特別支援学校の教諭免許の取得も可能です。

本学部のカリキュラムには主として以下の3つの特色があります。
1)入学後に専攻を決定
1つ目は、専攻決定の方法です。本学部では、実技入試や一部の推薦入学者を除き、1年後期に専攻を決定します。
近畿圏の大半の教育大・教員養成学部では、入試段階から専攻を定めています。本学部では、入学から1年かけて、高校まで慣れ親しんできた「各教科」に関連する学問の他、幼児教育や特別支援教育、そして教職の基礎となる教育学や子ども理解に欠かせない心理学も学びながら、何を専攻するのか=4年間で深く探究する分野を決定します。
2)理論と実践の往還を意図した学びの保障
2つ目は、理論と実践の往還を意図した学びの保障です。
本学部は教員養成を目的とした学部であると同時に、高等教育の場でもあります。「教育とは何か?」を問うこと、様々な教育の現代的課題に対する知見を得ること、批判的思考法を身につけることなど、大学での理論的・原理的な学びを大切にしつつ、実践的な学びとの往還を可能とする多様な実習にも取り組みます。例えば、教育ボランティア、ミュージアムボランティア、和歌山県の教育事情を体験的に知り得る小規模校実習(1,2回生)等があります。体験的な学習では、子どもたちから学び、学生同士で協働し、地域理解を深め省察する力の形成を意図しています。
3)3回生後期における「アクションターム」の設定
3つ目は、教職や教科共通などの必修科目を開設しない「アクションターム」の設定です(ゼミ・集中講義を除く)。2025年度から開始されるアクションタームでは、副免許の教育実習やへき地・複式教育実習(何れも希望者)に取り組むだけでなく、短期留学、教育ボランティア、社会教育施設や子ども食堂・放課後デイサービス等福祉の現場、被災地等でのボランティア活動、卒論執筆に向けての資料収集など、授業以外の活動に集中的に取り組むことが可能です。
アクションタームの目的は、「自分磨き」です。学部では地域活動に関する実習(希望者)も設定していますが、私たち教員は、学生たちが自ら課題設定をして主体性を発揮し、視野を広げ自らの可能性を切り拓くような活動に取り組むことを期待しています。
以上のような特色をもつカリキュラム教育をもとに、私どもは、広い視野と深い洞察力をもち、子どもたちの学習権保障を担う教員の養成に、そして、現職教員のみなさまの研修(研究と修養)の機会や大学院教育の充実に一層務める所存です。

紀学同窓会のみなさまには、教員採用試験模擬面接対策、150周年記念事業等、財政面も含め多岐にわたる御支援・御協力をいただき、深く感謝申し上げます。今後とも変わらぬご厚情を賜りますよう、お願い申し上げます。