紀学同窓会とともに歩む大学
和歌山大学長 本山 貢(もとやま みつぎ)
紀学同窓会および会員の皆様方には、平素より教育研究活動に多大なご尽力をいただき心から感謝を申し上げます。これまで4年間にわたり教育学部長としての責務を果たしてきましたが、令和5年4月から和歌山大学第18代学長に就任し大学の責任者としての任務を全うしていきます。ご支援のほどよろしくお願いいたします。
さて和歌山大学は、教育学部、経済学部、システム工学部、観光学部、そして令和5年度から文理融合のデータ利活用人材の養成を目指す社会インフォマティクス学環を新たに設置しました。教育学部では、教員就職率をこれまで以上に高め、和歌山県を中心とした質保証された教員養成に取り組んでいます。経済学部では高度な専門知識と実務能力をバランスよく備え、社会において即戦力として活躍できる人材の育成を目指しています。体系的なカリキュラムや丁寧な学習支援体制により、早期卒業や飛び級による大学院進学を視野に入れた教育研究指導を展開しています。観光学部では国内の観光学をリードする教育機関として、国連世界観光機関が実施する「TedQual認証」を取得しています。我が国において、学部・大学院一環で当該認証を取得しているのは観光学部・観光学研究科のみであり、本学の特長の一つです。また令和5年度より観光人材を育成する日本初の専門職大学院を発足させました。システム工学部では最先端の研究や世界の動向を見据え、複合的な専門知識・技術を身に付けることができ、広範かつ柔軟な専門性をもった、より高度な専門性を身に付けるために、学部4年間と博士前期課程2年間をシームレスに学修することができる6年一貫制をスタートさせました。また起業家精神を育成するアントレプレナー教育を本格的に実施するなどこれまでにない幅広い教育体制ができています。
その中でこれからの社会が希求しているものは、「学びに向かう豊かな人間性、そしてコミュニケーション力」だと考えています。自身の感情をコントロールし、他者を尊重し、チームワーク、謙虚なリーダーシップ、「思いやりの心」を身につけてほしいと思っています。和歌山大学での学びを志すZ世代の皆さんが、「大学とは何をするところなのか、そして何をすべきなのか」という問いに対して、私たちはしっかりと責任をもって答えていきたいと思います。私たちは、和歌山大学での学びを志す皆さんをしっかり鍛え、社会に送り出す責務において明確なビジョンと戦略をもって体系的な教育課程を編成し、社会を創る学び、インターナショナルな学び、そして地域での学びなど、さまざまな学びを支援する仕組みを設け、身に付けた学びが実感できるよう支援していきたいと考えています。
和歌山大学は、豊かな自然環境と世界文化遺産に恵まれた和歌山県唯一の国立大学として、地域社会と共に地域の発展に寄与し、地域を牽引する人材育成を目指しています。地域社会と共存共栄したバリューチェーンの創造を実現させるために、学生と教職員、地域が共に育つ総合大学としての強みと特色を明確化し、さらに大学を支えていただいている同窓会や後援会の組織との信頼関係を築きながら常に対話を重視し、連携を深めるため積極的に努力していきたいと思っています。
和歌山大学は一般に「地方大学」といわれますが、地方大学はすなわち地域社会との距離が近い大学です。本学構成員の多様な研究分野は、複雑化・多様化・高度化する地域課題に十分対応してくれます。その成果として社会実装を実現し、「地域と共に歩む国立大学」として、社会貢献に努めていきたいと考えています。
また、附属学校に通う児童・生徒の保護者や関係者、そしてOB・OGは地域社会への関心の高さはもちろん、和歌山大学への期待も極めて高いでしょう。附属学校は単に教育を行う場ではなく、我々と地域をつなぐ重要な窓口であることを意識して相互の関係性を深めていきたいと考えています。
最後に、和歌山大学は地域や同窓会、後援会などステークホルダーからの多くの言葉に耳を傾け、対話することを忘れてはならないと思っています。紀学同窓会員の皆様のご支援とご指導、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願いいたします。
地域とともに学びの未来を拓く教員養成を目指して
教育学部長 田川 裕之
紀学同窓会員の皆様には、平素より教育・研究活動に多大なるご尽力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、2019年度末に突如として現れ、全世界に猛威を振るってきた新型コロナウィルス感染症も、3年あまりの歳月を経て、2022年秋以降の「第8波」を最後に、ようやく落ち着いてきたように感じられます。それに伴い、新型コロナウィルスの感染法上の分類は、5月初旬に季節性インフルエンザと同じく第5類に引き下げられ、大学キャンパス内においても、「三つの密」の回避、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等の基本的な感染対策を継続しつつも、マスク着用については個人の判断を尊重し、対面での授業実施を原則とするなど、ほぼ4年前の状況にもどりつつあります。
今後、季節性インフルエンザと同等もしくはそれ以下のレベルでの感染状況を継続していくのか、再び感染拡大の波がやってくるのか、といったことについては全く予想できませんが、いずれにしても、教育学部としては、学生の皆さん、及び教育実習やボランティアなどでお世話になる学校現場の方々の安全・安心・健康を第一に考え、教育の質保証を行った上で適切に対応していく所存です。
すでにご存じのように、和歌山大学教育学部は、1875年に和歌山県師範学校として創設され、時代の変化や地域の要請を受けて、その姿を何度も変えてまいりました。特に、今年度より、学校教育教員養成課程の3つのコース(初等教育コース、中等教育コース、特別支援教育コース)を、学校教育コースと支援教育コースに改編し、初等教育にシフトしたカリキュラム改革を行いました。
新しいカリキュラムでは、すべての学校教員の基盤となる小学校の学習内容を深く理解するために小学校の教員免許状の取得を卒業に必須とし、さらに、昨今の教員不足に対応し、地域の期待に応え、教員としての力量を向上させるために、小学校だけでなく他の学校種(中学校、高等学校、幼稚園、特別支援学校)の教員免許状を併せて取得していただくことも目指しています。
また、教育学部では、学校推薦型選抜(地域【紀南】推薦枠)で入学した学生の教員採用試験合格率、教員就職率、及び大学での成績評価が一般選抜(前期日程、後期日程)で入学した学生よりもかなり高いという実績が文科省に認められ、今年度入試から和歌山県全域に地域【紀南】推薦枠を拡大する形で学校推薦型選抜(きのくに教員希望枠)を実施いたしました。
特に、学校推薦型選抜(地域【紀南】推薦枠、きのくに教員希望枠)で入学した学生の大多数は、小規模校化の進む和歌山県内小学校での教員就職を希望しています。従いまして、4年間の学修成果としての知識・技能の修得だけでなく、1,2年次の小規模校活性化支援事業、3年次のへき地・複式教育実習などの和歌山大学教育学部の特色のひとつである自然豊かな地域でのホームステイ型の教育実習に参加することで、近い将来、地域に貢献できる力量を十分に兼ね備え、地域の期待に応えることのできる教員としての学校現場での活躍が大いに期待されます。
このように地域とともに学びの未来を拓く学校教員の養成に、大学教員、職員が力を合わせて取り組んで参りますので、紀学同窓会員の皆様には、引き続きご支援、ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
※以上は、2023年5月更新。